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原題:二幕による滑稽芝居《罰せられた放蕩者あるいはドン・ジョヴァンニ》
台本:ロレンツォ・ダ・ポンテ(1749〜1838年)
作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756〜1791年)
このオペラが初演されたのは1787年の秋、プラハでのことです。時代は近代ヨーロッパが幕を開けようとする直前で、人々がようやく中世以来の伝統的な社会から抜け出そうという頃でした。「自由」という言葉が声高に語られるようになるのもこの頃です。
物語そのものは至ってシンプル。数々の女に手を出した色男が天罰を受けるドタバタ劇です。スペインの劇作家モリナが原作して以来、イタリアやフランスの演劇界で改作上演を繰り返されるうちに、ドン・ジョヴァンニ(ドン・ファン)は神をも恐れぬ自由主義者としての性格を与えられていったようです。
さて、モーツァルトは1787年の初めにプラハを訪れ、前作《フィガロの結婚》が大変な反響を受けていることに気を良くしました。さらに新作を書くように依頼され上機嫌で取りかかったのですが、5月になって父レオポルドの死が彼を打ちのめすことになります。《ドン・ジョヴァンニ》の音楽に独特の影があるとされる所以でもありましょう。
モーツァルトとダ・ポンテの《ドン・ジョヴァンニ》には軽妙さと重厚さ、自由と束縛、遊びと真面目、生気と死相などさまざまな要素が混在しています。それはときに観る者の胸中の混乱を映す鏡となり、また殺伐とした現実に意気消沈してしまった心をくすぐる悪戯ともなります。地獄へ呑み込まれる男の姿に何を見るのか。人それぞれ解釈が分かれることを良しとしましょう。
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